2005-04-10 日
大川さん
愛すべき、とっても可愛い先輩がいる。小柄で髪はゆるいウェーブのかかったセミロング。縁こそメタルだが、あられちゃんのようなまん丸メガネをかけている。
仕事はバリバリやる人なのだが、どことなく頼りなげなホンワカとしたムードを漂わせている。私が大川さんの部署への異動が決まった時、私の知らぬ間に部長に姫宮の人となりを語り聞かせただけでなく、私の為にいろいろな規制緩和を図ってくれた。これが凄い。今居る部署は新しく異動になった人には全員1週間の泊りがけの研修が行われていたらしいのだが、3日間、しかも日帰りの研修で済むようにかけあってくれたのだ。私はそんな事、全く知らなかったのだが、部長は当然大川さんと私は相当懇意にしていると思った。だから大川さんのお宅で、ご不幸があった時「いろいろご存知でしょうから受付をしてね」と頼まれてビックリしてしまった。私のビックリ顔に部長もビックリ、そこで初めて大川さんと私の縁の薄さ、イヤ異動前には全く縁が無かったことを知ったのだった。
実は大川さんは、私が前の部署で一緒に働いていた蒲田さんのお知り合いだったのだ。だから蒲田さんが言った「姫宮さんのこと、宜しく」の一言で、腕まくりの奮闘をしてくれたというわけだ。ありがたや、ありがたや。
私の歓迎会の席でも大川さんには驚かされた。全員会場に集合し、いざ乾杯という段になったとき「私、お腹すいてないからちょっとお腹を空かしてくるワ」と、やおら立ち上がると会場を後にしてしまった。そして、待てども待てども帰ってこない。ここは歓迎される姫宮が居るということで、部長が音頭を取りやっとこ乾杯。幹事のはずの大川さんの席は空のまましばし歓談。「やっとお腹が空いてきたワ」と大川さんが戻って来たのは、乾杯から30分は経過していた。「ちょっと散歩して来たワ。迷っちゃって帰れなくなるとこだったワ」。みんな口をあんぐりだけど、ご本人は「あらぁ、美味しそうねぇ」と並んだ料理に満足げに箸を進めていた。
そんな歓迎会から時を経て気心が知れるようになったある日、大川さんは蒲田さんを誘って我が家にやって来た。やっては来たが約束の時間を遥かに過ぎていた。原因は大川さんの思い込みの強さ。以前に来たことのある蒲田さんが間違いなくマンションの下まで来たのに、初めて訪れた大川さんが毅然として「ここではないワ」と言い張って譲らなかったというのだ。蒲田さんは、さんざん大川さんにひきづりまわされ、しびれをきらせてかけた私の電話での道案内で、やっとこ振り出しに戻れたのだった。しかし、来たことの無い場所を「ここではない」と断定できるあの自信はどこからくるのだろう。蒲田さんご苦労様。
お二人を部屋に招き入れ、お茶を飲んでいると突然の雷雨。そしてその後の虹。それはそれは大きく綺麗なものだった。自慢じゃないが自慢しちゃうと、我が“御殿”からは遮蔽する物も無く、虹を180度見渡すことができるのだ。だから大川さんも蒲田さんも、とっても感激しながら私のデジタルカメラに納まったのだった。
夕食は近くのイタリアン・レストラン。そこで、またまた驚かされる事件発生。3人で美味しく食事をしていたのだが、大川さんがなぜかボーイさんを手招きする。そして呼ばれたボーイさんが聞かれたことは「お隣に座ったカップルはどうしたの?」。ボーイさんも蒲田さんも私も??? ボーイさんが怪訝そうに答える「お帰りになりましたが」。「アラ、来た途端に帰ってしまったの? 何があったの?」。ボーイさんも私達もいったい何を大川さんがおっしゃっているのか分からない。隣に座ったカップルは、ちゃんと食事をして帰って行ったのだ。それは、今ここに居る3人とも知っている。その旨を伝えると大川さんは言ったものだ「アラそぉ。楽しい時間は早いって言うのは本当ね。ぜんぜん分からなかったワ」。いえいえ大川さん、いっくらなんでもお隣に座ったカップルがこ一時間はかけて食事していたことは皆分かってますよ。我々はちょっと時間をかけ過ぎです。ほらボーイさんが(まだ帰らないのかなぁ)という顔で見てるでしょ。おっと、あまりこちらを見ないで下さい。大川さんがまた、訳の分からない質問で呼びよせかねませんから。
その日のことは後日談がある。虹と一緒の写真を大川さんに渡した時「あの日、虹を見た人って他にも居たのねぇ」と言われたのだ。「私達だけが見たのだと思ってたワ」と。
あのぉ、虹ってあの広い空に見えるのですよ。昔、佐良直美が♪世界は二人のために なんていう歌を歌って新人賞をとった事があったっけ。まさか、あの虹が3人だけの為に出たとお考えだったわけではないでしょうね。
大川さんは、この欄を読んで下さっているという。そして「とっても上手ねぇ」と、ゆったり口調で褒めてくれる。そういう大川さんも会報のような冊子に、健康に関する2005年を書いている。それがかなり専門的で、情報がとても豊富なのだ。そのことをお返しのように言ったら、またまたびっくり。「あれ、色々な本の抜き書きだもの。私にあんなこと書けるわけないワ」。だから「本代がかかってしょうがないワ」。それって阿部なつみよりヤバくないですか。「著作権の問題とか起こりませんか」と心配して聞いてみると「あら、上が書けって言ったんだから問題が起こったら上に言うワ」でおしまい。上はそんな状況をご存知ないのではないだろうか。
大川さんは、若々しくとてもチャーミングである。その秘訣はこのおおらかなマイペースにあるような気がする。私も私だけの世界をもって、おおらかに生きて行きたいものだワ。