花見@デザインセンター

わぁい春だ、桜も咲いた。お花見のシーズンだ。とは言え、悲しいかなここのところの私の花見といえば、通勤途中の電車の窓から見る沿線の桜を「ああ、今年も咲いた」と眺めるだけだ。

以前、祭り好きが揃っていた部署に居た時は、部長以下部員一同うちそろい毎年お花見をしたものだ。朝から集合して皇居1周お花見マラソン。それから仕事。そして、仕事が終わったら本格的な花見酒なんて浮かれた年まであったっけ。私は運良く(?)足を怪我していたのでマラソンは不参加。後から車で応援しようと準備をしていると、スタートに遅れてしまった人が「追いついた所から走る」と、上下スウェットに着替えて乗り込んで来た。結局、追いつくことなく二人で車に乗ったまま社の玄関まで帰って来る始末。春の朝、皇居の周りをのどかにドライブしただけだったなぁ。

ある年は、先発隊が陣地取りをしておくというので後続は、安心してのんびりと行ってみると、やけに空いた場所だった。そりゃぁそうでしょう、桜の木なんて全然無いじゃないか。でも、確かに先発隊は木を囲んで座っている。「これ、モミジですよ」と言うと「エッ、まだ蕾で今夜にも咲くかと思った」って。とても大人とは思えない答えが返って来た。すでに本物の桜の木のまわりはどこも人だかりが出来ている。お花見の名目ではあるけれどお目当ての桜の見える場所は断念。要は美味しくお酒が飲めてわいわい盛り上がれさえすればよいのだから、これも有りか。途中で花散らしの風が、屋台で買ったタコ焼きの上に枯れ草を吹き付けて来た。タコ焼きは鰹節が散らされているのか、枯れ草が乗っているのか判断できかねる状態。それでも、わいわい騒ぎながらだとタコだろうが、鰹節だろうが埃だろうが枯れ草だろうが、大口開けて美味しくぱく付いてしまう一夕だった。

翌年、予定した日は大雨。靖国神社の大きな鳥居の近くに陣取って震えながら、それでも全員集まるところが凄い。誰が持って来たのかダンボールで雨風を凌ごうとしていると、近くに居た見ず知らずのグループもビニール・シートなど供出してくれ、結局3畳ほどの掘っ立て小屋が出来上がった。その中で2つのグループが持ち寄った酒と肴で大盛り上がり。時々シートの隙間から雨が滴り落ちるのもご愛嬌で、思い出深い宴会と相なった。ところであんな寒さの中で桜は咲いていたのかいな。

さらに、その翌年は面白い実験の年となった。幹事が配った案内状に日付と曜日が違うという、大きな誤りがあったのだ。ところが誰も気づかない。そして、集合場所に集まった比率は……。8対4で曜日の勝ち。会社員て、曜日の感覚の方が強いのだろうか。思わぬ統計が取れてしまった。でも統計云々は関係なく、名目があって集まれば大いに飲んで駄弁るのだ。♪4月は花見で酒が呑めるぞぉ〜の歌の通り、酒が呑めてお喋りに興ずる事のできる仲間がいれば会社員はそれでいいのだ。

ここで、某先輩から一昔も前に聞いたお話を披露しよう。先輩に断りなくではあるが、ここでバラしても鉄拳は下るまい。それに“男のクセにお喋りだ”と、皆から言われていた人だから、アッチこっちで既にてしゃべくりまくっていることも想像に難くない。

仮に山田先輩としておこう。先輩は満開の桜の季節に福岡にある弊社の西部支社へと出張した。支社には先輩の同期である田中氏が転勤していた。仕事も終わり、二人は旧交を温めるべく田中氏の案内で名物の屋台から屋台へとハシゴをした。そこには美味しい酒と肴が待っていた。しこたま飲んだ二人は、月の明るい夜、散る桜にほてった頬を打たせながら、まことにイイ心持で山田先輩の宿へと向っていた。すると、こじんまりとしては居るが、枝振りの良い桜の木が植えられた公園があった。その桜は側に置かれた石灯篭の光に浮かびあがり一幅の絵画のようだったとは山田先輩。

「おい、あの樹の下でもうイッパイやろう」とは、果たしてどちらが言い出したものか。それから自販機を探し、めいめいにカップ酒やらビールを買いこんだ。入り口が見当たらないのでフェンスの代わりか、低く丁寧に刈り込まれた垣根をエッコラショとまたぎ、目指す桜の下でお花見が始まった。♪同期の桜なんぞも歌ったかもしれない。すっかり気分良く飲んでいると遠くにパトカーの音。その音がだんだん近づいて、二人がお花見している公園の前でピタリと止まった。どんな捕り物が始まるのかと興味津々の酔っ払い二人。ところが、警官が駆け寄り捕らえたのはこの酔っ払い二人だったのだ。曰く「住居侵入の現行犯」。

仲良し同期の酔っ払いが、公園だと信じてお花見していた場所は他人様のお庭だったのだ。豪邸の住人がカーテンの蔭から、ふと庭を見ると、見知らぬ酔っ払いがだみ声を上げながら酒盛りをしていたのだ。これはパトカーも呼ばれます。酔っ払い達は九州の某警察に一晩ご厄介に相なった。そして翌朝、事情を聞いて貰い受けに足を運んでくれた田中氏の直属の上司のご好意で、差し入れてもらったカツ丼を食べ「公園だと思い入りました。右相違有りません、うんぬん」という書面に署名し拇印をついて、無事出所することができたのだった。

かようにニッポンジンはお花見が好き。でも、ワタクシ正直のところ今の心境は少女コミックの漫画そのままに“花より男子(だんご)”でございます。花より団子は、この下腹を見ては禁句でございますし、一人で花を愛でてもつまりません。今年こそ、一緒に夜桜を楽しんでくれる王子様が現れるのを期待しているのだが、近くにお馬さんは来たものの、ねぇ王子様をどこで下ろして来ちゃったのさ。