「北海道日本ハムファイターズ」。寿限無とまでは言わないが、この長い名前のプロ野球球団のファンになったのは昨年の初夏。まだ東京ドームに本拠地を置き、球団名も「日本ハムファイターズ」だった頃だ。友達の元上司を通じて、なぜか「日ハム×ダイエー」のチケット2枚が私の手元に回って来た。野球は殆ど知らないが、せっかくだから行ってはみたい。会社でトイメンに座る男性に声をかけると、元野球少年だったとかで大喜び。「是非、行かせていただきます」との二つ返事。それじゃぁ行きましょうと6時ギリギリに社を出たもので、着いた時には6時開始の試合は、3回裏になっていた。

もともと、知識の無いプロ野球。選手の名前もチームの内容すらも知らないままに座席につくと、時々見た事のある顔が出てくる。「アッ、王だぁ」。そう、ダイエーの王監督。この人なら選手の頃から知っている。そろそろ現役引退の声も聞こえ始めたころ、まだ地べただった後楽園球場に、一度だけ連れられて行ったことがある。その時、「バッター△△に代わりまして、王」と告げるウグイス嬢の声に、大地がゆるぐかと思われるほどの大歓声が轟いたことを記憶している。

その人が監督となって目の前に。こりゃ応援するなら王監督率いるダイエーしかないと思っていると「日ハムの先発投手、関根は私の学校の後輩なんです。贔屓のチームが無かったら今日は日ハムを応援していただけませんか」と連れに言われてしまった。ま、一方的に知っている王さんよりも、毎日顔を合わせている人の願いを今日のところは聞いておこうと、俄か日ハム応援団(?)結成。でも、座席は3塁側ダイエーの応援席なのよねぇ。最初はまわりのダイエーファンにはばかって、心の中でピッチャー関根を応援していたものの、打たれてしまって交代。でも、乗りかかった船、今日のところは応援団の解散は無し。

それから、応援団員として日ハムの攻撃を見ていると、私なりの方程式ができて来た。4番の背番号を背負った選手が、まずは打って塁に出る。すると2番の背番号がガッチリ打って、4番をホームへ帰す。そして得点が加わる。だから4番の背番号に打席が回ってくると、点が入るという期待がもてるのだ。暫くして4番の背番号は奈良原という選手、2番は小笠原というのだと知った。もう一人の応援団にそのことを告げると「凄いですネェ、よく見てますね。小笠原はパ・リーグの首位打者だし、奈良原の守備は目標にしている選手が多いんですよ」と褒めてくれた。褒められるのが何より好物だもんだから、自分の眼力にすっかり自信をもって益々熱心に日ハムの応援に励むようになる。

そして、このゲームは乱打戦になった上、危険球でピッチャーの退場あり、二度の乱闘騒動あり、延長ありで、一日でテレビ番組『プロ野球好プレー・珍プレー』の場面を殆ど体験してしまうことができた。野次も不思議なものを聞いた。貴賓室のような場所からオヤジが出てきては「○○、バカ野郎!!」「○○、何やってんだぁ!!」と叫ぶ。しかし、どう眼をこらしてボードの名を見ても○○に当たる選手が居ない。一体何なんだろうと思っていたら分かりました。アンパイヤに対する不平不満だったのですね。どうも、貴賓室のような部屋にはテレビも備え付けてあるらしく、それを見ては審判に野次をぶつけていたらしい。そして延長が決まった時は1塁側、3塁側関係なく全く同じ野次が飛んでいた。「帰りの電車が無くなるぞぉ。早く決めろぉ!!」。延長11回、とうとう劇的に日ハムが逆転勝ち。こんなゲームを見せられちゃ応援団は解散などできず、折をみては東京ドームへ通うようになる。

しかし、哀しいかな昨年の調査では、プロ野球12球団に占めるファンの割合が、日ハムとオリックスは、四捨五入すると、なんと0%。全野球ファンの中に日ハムとオリックスのファンは1%もいないとは。だから、日ハムファンというだけで「珍しいネェ」と奇異な目でみられ、選手の名前を言ったって分かる人は殆どいない。まず知らない事を前提に話を始めなければならない。「ご存知ないでしょうけど、日ハムに奈良原というイイ選手がいましてね。背は低いのですが正に職人といったようなプレーをするんですよぉ」って。

昨年の成績はパ・リーグ6球団のうち、栄えある(?)5位。勝率も5割なんてとんでもない。ところが、私が見たゲームの勝ち率は8割。ってことは私が全試合応援に行けば優勝間違い無し?! そうそう、今年は本拠地が札幌になってしまったので、なかなか思うように行くことができないが、東京ドームでの試合を一度だけ見た。対近鉄戦。新庄、セギノール、坪井のホームランも飛び出して8回まで5対0で楽勝ムード、ところが9回表に満塁ホームランを許すなどで5対5にされてしまう。そして9回裏、無名のしかも打率1割にも満たない2年生がさよなら二塁打を打って勝利。見せてくれますよ、憎い演出ですねぇ。それでいて、翌日の札幌に帰っての試合は3対16で惨敗。こんなに面白い試合を見せてくれるチームはありません。何しろ昨年9月28日、後楽園球場だった1964年以来通算すればほぼ40年間本拠地としていた東京ドームで、ホームとしての最後の試合の日、中盤まで勝っていたにも関わらず、押し出して点を取られての負け。有終の美とまでは言わないけれど、押し出しで負けることはないじゃない?! あの日は、いっつもガラガラの客席が目いっぱいうまってもいたことですし。

ただ、今年の日ハムは違う。ストーブリーグの頃から北の大地あげての大応援団結成や、新庄加入でマイナーなパ・リーグの中のマイナーな日ハムが脚光をあびている。そうなると天邪鬼の私は、なんかつまらない。「私だけの日ハムで居てほしい」という気持ちが大きくなる。「なんか日ハムが遠くなる」って。でもね、最近売り出し中の女性お笑いの芸人さんが言ってましたっけ。「売れない俳優を応援していて急に売れ出すと、私から遠くなったっていう人。もともと、その俳優は貴女の近くには居なかったのよ」。