ヌーブラを買った。いや正確に言うならヌーダブラという代物。本家のヌーブラは「わが社はアメリカより正規に輸入した品を定価で販売しています」と胸を張る大阪の会社が発売している。お値段は1万数千円。しかし、私が神田の安売り店で購入したのは「類似品にはご注意下さい」と呼びかけられている物なのか、一桁違いの1344円也。会社の所在地も名古屋だぎゃね。

深夜の通販番組で、初めてヌーブラなる物を目にしたのはいつの事だっただろう。アメリカ製のシリコン素材、ブラジャーの肩紐と背中に回す、なんと呼ぶんだろうなぁ、兎に角、乳房を覆う部分以外は極端に削除した形態のもので、乳房につけたら泳いでも外れないんだそうな。激しい運動で汗をかいても大丈夫。ソフトで自然なパットは完全シームレスでTシャツにも響かないし、フロントホックで胸の谷間もきれいに出来ちゃうんだって。あらまぁ、なんていいんでしょ…でも、1万数千円は、ちと試すには勇気の要るお値段。普通のブラジャーなら、そのくらいの値段の物はザラにある。現にワタクシも1万5千円なりのを持っている。ただ、普通のブラジャーなら、一度試して、もう辞めたという事はまずない。それが未体験の乳房に張り付かせるヌーブラとなるとねぇ。

私、世に言う微乳(決して美の誤植に非ず)。そうよそうよ胸が貧弱なのよ。殆ど平らなのよ。だから、胸の谷間なんて言葉には、世のオヤジやお兄ちゃん達以上に反応してしまう。なにしろ、近所の5歳の坊主と仲良く入浴した際、「なんで、おんななのにおっぱいがないの?」と、素朴な疑問をなげかけられた筋金入りの貧乳であるからして。

ヌーブラ試したいなぁの理由は、もう一つある。何かで締め付けると、ほんのチョットの刺激でも体中どこでもミミズばれになってしまうという蕁麻疹体質なのだ。貼り付けるだけなら、これも解消。いいことだらけ。なので、神田の安売り店で1344円也のヌーブラと思しきものを発見した時の驚き、喜び。1344円ならお試し価格として許せるでしょう。で、素直な感想はと言うと。なかなか、いいんだなこれが。卵を割らないようにそっと包み込んで持った手の形、そんな雰囲気で乳房を覆う。糊とは違うのだが粘着面がやわらかく貼りつく。のっぺりと肌を覆った姿を鏡に映してみると、なんだかサイボーグになったようだ。

さて、実地研修として外に出てみることにする。まずはスーパー・マーケットまで。万一剥がれ落ちそうになった場合に、駆け込むトイレの場所をチェック。ぶつかって取れたり、位置がずれたら大変なので人のたかってない所を歩く。だから本日の安売り商品は残念ながらパス。ああ、あのマグロ、美味しそうだったなぁ。りんごも安かったなぁ。

気がつくと、ついつい手が胸の下方に行っている。誰も見てはいないだろうが、さりげなく接着面を上から押してしまう。大丈夫、大丈夫、何処からも剥がれる気配は無い。結局、重いものは止めておこう、大きな物は次回にしようで、納豆と食パンだけ買って帰路へ。これなら、目の前にあるコンビニへ行っても済んだのに。マ、往復20分、買い物時間わずか10分ではあるが、無事第一弾の実験は成功ということで。

さて、次は大冒険。東京ドームへ日ハム×近鉄戦を見に行ったのだ。往復で1時間ほど電車にも乗る。試合が始まれば応援にも熱が入る。手に汗にぎり、ヌーブラの中にも汗をかきそうだ。晴天のデー・ゲーム。気温も24度を越えていたが、不測の事態を考えて上着を着用。上着の下に手を忍ばせ、胸からヌーブラが剥がれないよう押さえつけている自分に気づく。ちょっと怪しい雰囲気だが、なかなかその手に好感触なんだなこれが。ご贔屓の日ハムも際どく勝ち、ヌーブラも剥がれることなく無事祝杯。

実験の結果、背筋を伸ばし正しい姿勢でいれば、ヌーブラは外れないということを確認。猫背、極端に言えばかがんで顔を洗うような動作をすると、胸との間に空気の隙間が出来て、チト危ない。ピアスをすると運命が変わる、なんて事がささやかれたが、私もヌーブラをして胸を張って歩いていけば、幸せな運命が待っているだろうか。期待に胸は…やっぱり貧乳は貧乳。