障子の張替え

従姉妹に手伝ってもらって、障子の張替えをした。いえいえ私が手伝って障子の張替えをしたが正解だった。

破ったり穴を開けるわけではないが、和室が南に向いているせいで障子が陽にやけ裂けてしまうのだ。裂けている障子に気付いたのは大分前だが、暫くは見なかったことにしていた。見てない障子の裂け目は無いのだ。けれども、見ないふりができないくらいに、いつの間にか裂け目が大きく口を開けだした。それからは、紙テープで補強に努めたが、風が吹くとテープが負け、裂け目が開いてバサバサと音まで立てる事態に。

さすがにここまできては張り替えを考えざるを得ない。でも、どうやって?こんな時に泣きつくのは2歳年上の、しっかり者の従姉妹ということになる。なかなか時間が取れないという従姉妹だが、どうせ長らく放ったらかしにしていたのだから、ここは機嫌を損ねないよう、お声のかかるのを待つことにする。

やっとこ「今度の土曜の午後なら行ける」という連絡が入り、ちょうど私も休める土曜だったので、待機。障子紙も用意して来てくれるという有り難いお言葉に「出来れば、もう破れることのない金属繊維か何か入ったのを」と調子に乗って頼んで「どんなんだって、張り替えられればいいでしょ?!」と叱られてしまった。はい、どんなでも結構でございます。

さて当日、あんまり煩く言ってもと思いつつも時計を見ると2時を30分も過ぎている。確かに「土曜の午後」としか約束してないのではあるけれど、ちょっと心配になって逆鱗に触れないことを祈りつつ電話をしてみる。なにしろ、全てをお任せの身と致しましては神経使います。「ごめんごめん、ちょっと子供の用事が入っちゃった。もう直ぐ出るから」って。そちら埼玉の片田舎ですよ、そしてこちらは都内も山手線の内側よ(おほほ)。いったい何時に着くんじゃい。でも、陽も伸びたことですし、ぐっと堪えて「暗くならないうちに着く?」と聞くと「大丈夫、着く着く。それより古い障子紙くらい剥がしておいてね。水で濡らせば綺麗に剥がれるから」と、宿題を出されてしまった。やはり、おとなしく待っているべきだったかも知れない。

仕方ない、ここは宿題をしながら従姉妹殿のご到着をお待ち申すしかない。水で濡らすとなると敷居から外して、ベランダで事を成すことに致そう。ン、なんだってこんな言葉使いになってしまったのであろう。障子から和風、江戸時代と単純な脳細胞が働いてしまった結果でござろう。

肝心の障子が、押しても引いても頑として敷居から外れてくれない。仕方が無いので、とりあえずそのままの状態で、障子を破る。昔、実家の大掃除で豚弟と競って破っていた頃は楽しかったが、宿題となると何事もつまらないものに変わってしまうのは何故だろう。

さて、桟にこびりついている紙を剥がすにはどうしても、敷居から障子を外さなくてはならない。非力の姫体質に渾身の力を込めて、ググッと障子を引くと、畳がズズッと嫌な音はしたものの、どうやら擦りむけ状態は免れたようだ。

やっとこ障子をベランダに出し、桟に残っている部分の剥がし作業開始。従姉妹は「濡らせば綺麗に剥がれる」と言っていた。バケツに水を汲み、雑巾を濡らして桟を拭く。落ちない。力を込めて、ワッセワッセ。ん〜。きっついなぁ。やっとこ剥がれた水に濡れて縮こまった小さな紙がベランダ中に散らばる。とっても見苦しい光景だけど、今は無視。後で、みんなまとめて片付けることにする。それにしても従姉妹はまだかいな?!

「噂をすれば陰」というのは、どうやら独り言でも当たるようで、心で噂をしていたら途端にチャイムが鳴って、女剣士のように丸めた障子紙を抱えた従姉妹が登場した。

私が、宿題を褒めて欲しい生徒のように「ほら、障子剥がしたよ。すっごい大変だったんだからぁ」と、桟だけになったベランダの障子を指差すと「もう1枚はまだやってないのぉ?!」と不平タラタラなニュアンスのお言葉が返って来た。「破けてるのは、綺麗に剥がしたよ」の言葉を発した途端に「バカじゃない?!」と、冷たい言葉が飛んできた。「障子は対になってんでしょ。片方だけ新しくしたら、もう1枚の汚れが目立ってしょうがないじゃない。バカじゃない?!」。ニ、2度も言わなくても…。

それからの女剣士、動きの素早いこと力強いこと。1枚、残されていた障子をいとも簡単に、桟からはずしベランダへ出す。濡れ雑巾も濡れ雑巾、ビショビショの雑巾で障子の桟を端から何度も撫でる。私が剥がしておいた方の障子を綺麗に拭きなおして座敷に上げ、「液状のりを買って来ようかと思ったけど、これだけの桟があったら、やっぱり刷毛で塗った方が早いわね。昔の人はよく考えてるわ」なんて、盛んに感心しながら『舌切り雀』の雀が舐めたような糊を刷毛につけ、サッサと桟に塗って行く。そして、剣ならぬ障子紙をその上に滑らせて、カッターで丁寧に切ったら「はい、1丁上がり」。

そして、ベランダで水びたしにしたもう1方の障子紙の端を摘んで、ヒョイと剥がすとアラ不思議?! 全く抵抗なく、障子紙が剥がれる剥がれる。桟にへばりついた汚い紙の屑も出やしない。私のあの苦労は一体なんだったのだろう。

「濡らせば、綺麗に剥がれるって言ったでしょ」。ごもっともでございます。

「その障子の桟が乾くまで、マンゴーを持って来たから食べよう」。あらら、お土産まで恐縮でございます。ここぞと、知ったかぶって賽の目に包丁を入れた途端に「包丁は斜めに入れるのよ」って従姉妹の声が飛んできた。またもやアララ。「ま、食べられないわけではなし」と言いつつ、明らかに呆れている従姉妹の目がそこにあった。

働いた後の(?)マンゴーは、丁度食べごろで美味しかった。従姉妹の「マンゴーって、柿と味が似ていない?」という問いかけには大いに同意。東国原知事がやたら紹介している、何千円もするマンゴーは口にできないが、柿なら実家の庭に毎年生る。さすが私の従姉妹、イイトコに目をつける(洒落よ、シャレ)。