2006-09-03 日
スッスッススー
「スッスッススー、スッスッスッスー」 別にラマーズ法ではない。
たまたま早朝に目が覚めてしまった日曜日、テレビをつけると『早く起きた朝は』の画面が現れた。磯野貴理子、松居直美、森尾由美の3人が視聴者のハガキを読みながら世間話をするという他愛も無い番組だが、確かスタート当時は『遅く起きた朝は』という名前で日曜の朝9時半からの放映だったはず。それが『遅く起きた昼は』という名前で午後1時半に移り、気づいたら早朝に変わっていたというわけだ。
その番組の中でウエストの括れを作る方法として松居直美が披露していたのがこの「スッスッススー」という呼吸法だ。すぼめた口から「スッスッススー」と、下腹部の空気をすっかり搾り出す。「これをやったら、クビレができたのよぉ。ウエストって自分で思っていたのより高い位置にあるのよぉ」と、松居直美が目を輝かせて語り、磯野貴理子も森尾由美も膝を乗り出して聞いていた。
そして、ベッドから飛び起き、テレビに向かってググッと身を乗り出していたのが、この私だ。木村拓也が何年か前に「く・く・くびれぇ」という台詞を吐くエステのCMが話題になったが、女性はやっぱりクビレが欲しいやねぇ。それにウエストにクビレができるということは、同時に体重も減るということだ。このところ夏の温度計よりぐんぐん上がって行く体重の数値を落すために、これは試さにゃなるまい。
しかし、「スッスッススー」の呼吸法で、果たして私が痩せるために挑戦する方法は何種類目になるのだろう。頭の上で腕を組み腰をひねりながら歩くデューク更家のウォーキングも、指にテープを巻く方法も、髪を束ねてゴムで縛る方法にも挑戦した。挑むのは早いのだけど、諦めるのはもっと早いという潔さゆえどれも続かないのよねぇ。
座ってユラユラしていれば体内脂肪を燃やすという、直径80センチもあるゴムボールも購入したっけ。何度か乗ってはユラユラさせてみたものの、背中から思いっきりよく落ちてからは独り暮らしで頭でも打った日にゃぁ、異臭騒ぎで発見されるまでそのまんまであると気付き、自粛している。空気は抜かずに放ってあるものだから、風が入ると部屋の中をデカイ図体でゴロゴロと転がりまわって目障りなことこの上ない。
大枚はたいて購入した、装着して横になっているだけで細くなれるという、手首から二の腕までと足首から腰の付け根までという長〜いサポーターも、その圧力の凄さに肉がうまく入って行ってくれず断念。今では私の無惨な太ももと二の腕の形を残したまま、ケースに入ってクローゼットの中だ。
それにしても「昔は良かった」の常套句ではないが、昔の私は「電信柱がコートを着ているようだ」と口の悪い母から言われたくらいに痩せていた。服のサイズは5号や7号、夏のワンピースに至っては3号なんていうのもあり、自分でも目を疑ったほどの華奢さだった。思い出してみればあの頃は「お米を一粒ずつ食べているから、そんなに痩せっぽなのよ」って、これまた母から言われるくらい食も細かった。そして食べ過ぎたと思うと必ず下痢をしたものだ。打って変わって現在は「おなかは一杯なんだけど、目が欲しいのよねぇ」と、目につくものは次々と平らげ、挙句には苦しい便秘。これじゃ太らないはずがない。
自分で“太った”を実感したのは数年前、八重洲地下の店でスーツを試着した時だ。平素はデパートのストロベリーサイズ・コーナーやパールサイズ・コーナーという可愛い名前のついた、小さなサイズ専門コーナーで買い物をしていたのだが、その日は普通サイズを取り扱っている服飾店にふらりと入り、気に入ったスーツが7号だったので試着してみることにした。すると、テーラーと思しき実年男性が「そちら、ウエストは出せますので大丈夫ですよ」と言ったものだ。(ウエストが出せるぅ?!)。ウエストを“つめる”ことはあっても“出す”ことはあり得ない。(何をホザクか)と内心ムッとはしたものの、そのまま試着室へ。
う・うっそぉ?! ビックリこきまくりです。あの細い私のウエストはどうしたの? どうにかスカートのジッパーは上がりベルトのボタンは留まったものの、大きく息をしたならば、途端にジッパーははずれ、ボタンは飛び散ることは間違いなさそうだ。スカートのベルト部分は見事に私の下腹にめり込んでいるではないの。ここで「ウエストを出して下さい」というのは女の沽券にかかわる(?)。かなり気に入っていたのだが、その、目の効くテーラーが他のお客の相手をしているのを幸いに急いでスーツを元の位置に戻して、大急ぎで店を後にした。それにしてもショック!!
あのショックで、ウエストを元のサイズに戻す努力をしたならば、あそこで留まっていられたのに…。
後でするのが後悔。あれから数年で何キロお肉が増えたことやら。今では怖くて体重計に乗ることすらできやしない。パールサイズだった頃は、私のサイズに10号足した服を着ていた母に「これだけの余分な重量をお母さんは持ち歩いてるのよ。少しは痩せるように頑張ったら!!」なんて、偉そうに牛乳パックを目の前に積んで見せたりしたものだ。それが今では私の体の中には牛乳パック半ダース以上は軽くつまっていることになる。
反省と努力の無い私はいかにしたら体重を落すことができるのだろうか。そんなことを考えていた土曜日のこと、通勤のために電車に乗った途端に便意が襲って来た。腹痛は伴わなかったし、土曜日で最寄り駅から座れたのは幸いだった。ひたすら自分に(あと20分、15分、10分…)と冷や汗をかきかき、カウント・ダウンをしていた。
そうだ、冷や汗三斗と言うじゃない。1斗とは…10升=18.039リットル。私はあの苦悶の時間18.039リットル×3もの汗をかいたことになるのだ。あらン体重が無くなっちゃう。それにしても見事な減量方法だ。この手があったかぁ。もちろん体に悪い状況作りはできない。これからは行く先々で大いに恥をかき、冷や汗をかくことを心がけるとしよう。
誰? 「厚顔無恥には無理」なんて言ったのは。