2006-07-30 日
飛散姐さん
私は、この世に誕生した際、礼儀正しく足から地に降りたものだから、その影響で股関節に問題がある。要するに逆子での股関節脱臼というやつだ。
ちょっと前までは、数年に1度くらいの割合で股関節に痛みが来ることはあっても、数日すると嘘のように痛みは去っていた。ところが、忘れもしない昨年の11月4日金曜日、文化の日の翌日のこと、朝起きると今までに無い絶不調が私の“おみ足”を襲っていた。
立ち上がるにも、一歩踏み出すにも頭の天辺まで痛みが走る。イタタ・イタタ、痛いんだってばぁ。
文化の日の休日は大人しく文化していたし、どこかほっつき歩いていたわけでも、悪い遊びをしたわけでも、ましてや姫体質に不似合いな力仕事をしたわけでもない。直接の原因は分からないけど症状は歴然とあるわけで、これには困った。
社の診療所、そしてその紹介によりJR新宿病院の副院長にまで診てもらったが「手術をするにはもったいない骨だが、治療も薬も無い故に現状維持に心がけよ」という、ちっとも有り難くないご託宣を受けて帰って来た。
病院が頼れない今の私を救ってくれているのは、サメと蒲田さんだ。
TV神奈川の『健康の達人』で紹介されていた“日本サメ軟骨学会”から行き着いたのはヨシキリザメの軟骨100%の粉末、顆粒、そしてエキス入りのドリンク剤だ。2、3ケ月で痛みが薄れ、1年を過ぎる頃には磨り減った軟骨が形成されるという嘘のような話だが、ここはひたすら信じるっきゃない。今までなら、通販で物を買うには最少の量から購入したものだが、今回ばかりは軟骨が形成される1年分を思い切って注文した。その量たるや、軽く我が家の畳1枚分は占領している。「だんだん減りますから」と主任研究員という名のオペレーター嬢は電話口で言っていたけど、まだ飲み始めてやっと1月半、サメの大群が北の部屋で風の通り道を邪魔している。ヨシキリ鮫君、くれぐれも効いてよね。
そして精神面での大きな癒しは、こちらも天然100%の蒲田さんの存在だ。
年下の蒲田さんを、私は姐さんと呼んでいる。年齢は下だが前の職場での配属が、私より1年先輩だった。芸人さんの世界では、例え年下でも入門の早い人は兄さん、姐さんと呼ぶらしい。それに習って「姐さん、姐さん」と呼び始めたら、けっこうこれがピタッと来た。最初のうちこそ「年下なのに…」とためらっていたが、今は当然のように「姐さん」と呼べば、返事をしてくれる。
ファースト・ネームは“ひさえ”さん。ある日、メモが私のデスクに置かれ、そこには“ひさえ”と署名されていたはずなのだが、どうしても“え”が“ん”に見えてしまう。なので、それからは“ひさん姐さん”と呼んでみたりもする。すると、それが口癖の蒲田さんは「ひどいわ、ひどいわ」と、笑顔で叩く真似をするのだった。
このところ姐さんとは週に1度、品川にある“十字式健康普及会”なる所に通っている。初めて連れて行かれた時、入り口を通り越してしまったのは序の口で、途中で買い物などすると、ためらいなく今降りた駅への道を歩き出す。私は母親譲りの方向音痴なのだが、蜂や蟻の世界でも働きモノの数が減ると、怠けていた蜂や蟻が俄然働き出すのと一緒で、この私が迷わず目的地に姐さんを道案内しているのだから不思議だ。
ジダンの頭突き騒動で幕を閉じたワールド・カップドイツ大会だが、日本対ブラジル戦を見んがために、蒲田さんは友達との食事会をキャンセルしたという。「そんな時間に食事会?」と聞くと「6時半の約束だったんだけど、キック・オフの9時までには食事をしたら帰れないから」という答えが返って来て、ヤッパリと思った。姐さん、貴女はドイツで日本対ブラジル戦をご覧になるのですか? キック・オフの日本時間は早朝の4時ですよ。それを伝えると「おかしいなぁ、おかしいなぁ」と納得のいかない様子。「じゃぁ、賭けましょう缶コーヒー」ということで、当然自販機の缶コーヒーをご馳走していただいた。フランス料理のフルコースでも賭ければ良かった。でもね、結果の分かりきっている賭けで勝っても醍醐味がありません。
会話をすれば“形状記憶合金”が、いつの間にやら“形状記憶喪失”になって、意味を成さないし、子供の頃の話になったら「私は小鹿のようだったのよ」なんて、可愛いかったという自慢かと思いきや「小鹿のゾンビよ」なんて。冗談では言わないタイプだけに可笑しさがいや増すというものです。
ここのところ“十字式健康普及会”に出かけると、2人で必ず寄るのがインドカレーの店“Devi”。店員は全てインド人、お客もインド人をはじめとして外国人が殆どだ。目も覚めるようなスカイブルーのサリーを纏ったインド美人と遭遇したこともある。「ゴチソウサマ」と、店を後にする金髪の紳士にインド人の店員が「アリガトウゴザイマシタ」と深々と頭を下げる不思議な光景を見ることもできる。インドのBGMとスパイシーな香りが充満し、品川に居ながらにしてinインド気分を満喫だ。
先日も、自家製チーズとほうれん草のカレー、シェフ特性チキンカレー、ガーリックと蜂蜜入りのナンを2人でシェアして美味しく平らげた。レジに向かった姐さん「まとめて払っておきますから」と宣言して、差し出したお金はと見ると千円札が1枚きり。姐さん、それではまとめて払えませんから。決して五千円札や一万円札のつもりで千円札1枚を出している気配が無いところがまさに姐さん。おかげでナマで見ることができました“インド人もビックリ”の光景を。
姐さん、これからも吉本の芸人さんのように楽しませて下さいね。