フェミニン?

ここのところ、レースをあしらった服をよく見かける。しかも、スカートの裾からのぞいていたりするのが多いものだからチト困る。あれは“シミチョロ”ではないのだろうか? と悩む。今では死語となってしまった、シミーズがチョロっとスカートから顔を出しているという意味だが、もしそうなら「もしもし…」って、ご注進申し上げなければ可愛そうだ。しかし、それがファッションだったら「大きなお世話よ」と言われるのがオチだろう。

数年前、母がタグを出して歩いている“お嬢さん”に「もしもし、服が表裏ですよ。タグが出てますよ」と教えて差し上げたところ「こういうデザインなんです!」と、キッと睨まれてしまったらしい。未だにその光景を思い出しては「人が親切に教えてやったのに、なんなのあの態度は」と、怒り狂っている。それからは、どんな格好を見ても「ああいうデザイン」と肝に銘じてグッと堪えているらしい。

それにしても、母の年代の人々には堪えねばならない事例が、巷にあまた溢れていることよ。縫い代が表になったカットソー、わざと色落ちさせたり穴ぼこだらけにした新品のジーンズ、下着のままで街中をかっぽしているようなキャミソール姿…。

昨日は、裾にレースがついた黒のダスター・コート姿のOLを見かけた。明らかに“シミチョロ”ではないと分かったが、ダスターコートの裾にレースはいくら流行と言っても違和感があった。だってダスターコートって埃(Dust)除けという意味合いのものでしょう。埃除けとレースはどう考えたってそぐわないでしょ。と、常識を考えていては今時のファッションにはついて行けないということかな。

それにしてもよ、ダスターコートの裾になんだってレースのヒラヒラがつかなきゃならないのか、どうしても理解に苦しんじゃうのよねぇって、くどい?!。なにしろ私は幼い頃から“シンプル・イズ・ベスト”がモットーの人間で、母や、私を舐めるように可愛がってくれた近所の斉藤さんチのおばちゃんが、可愛いもの、ピンクのヒラヒラがついたような服を着せようとしても、断固拒否。子供ながらに選ぶものと言ったら白・黒・紺・グレーという美輪明宏さまがごらんになったら「そんなの着てるから運気が下がるのよ」と言われる色ばかりだ。アッ、今頃己の運の悪い原因を知った。自ら招いたものだったのね。

母は“テーラーなにがし”から「養女に欲しい」と言われたくらいに器用な人で、紳士物のコートまで難なく仕立てる腕を持っている。なので私は、赤ん坊のミギリより涎掛けから始まって、社会人になっての第一歩である入社式でのスーツまで、全て母の手作りだけを纏って成長した。中学校、高等学校の制服ももちろん母の手作りだった。高等学校時代の制服はヒダのジャンパースカートに背広式の上着だったのだが、野暮ったい片田舎の中・高校生の中で、私の上着だけはウエストが絞られ、なかなかに“カッコ”良く自慢だった。

成人式も私は振袖ではなく、母にせがんでワンピースとコートを作ってもらいそれで出席した。黒地に、流石にこの時ばかりはピンクの花が咲く、ウールのレースでできたワンピースに、大きな襟のついた茶色のコートだった。式後、友達数人と一緒にスナップ写真を撮ってもらったのだが、この時、不思議な感覚を覚えた。スカートではあったけれど、洋装で真ん中に立ち、振袖の乙女に囲まれていると、まるで宝塚の男役にでもなった気分だった。なるほど、美しく着飾った女性をはべらすって、やっぱり気分の良いものなのね。鼻の下を伸ばしたオヤジの気持ちもちょっと分かった気がしたものだ。

こんなにまで母の手作りの服にこだわった私だが、いくら母が勧めてもピンクや赤やオレンジの布地は選ばず、デザインもそのまま制服になるような物にしか首を縦にふらなかった。なので、折角オーダー・メイドの服を着ることができるという贅沢な人生も、変わり栄えのしない服ばかり作ってもらっていたのだった。こんなに美しく可愛い一人娘、母はさぞ飾り立てたかったろうに。さぞかし飾り甲斐もあったろうに。

そして歳月は流れ、今頃になって(親の意見とナスビの花は…)の言葉をかみしめている。やっぱり可愛い服は、着て似合う時期に着ておくべきだったと後悔しきりの日々なのだ。だって、今すっごぉくピンクのフリフリの服や、うさぎちゃんのように白いモコモコの服を着てみたいなぁなんていう思いに陥っている私なんですもの。ウフッ。って、可愛い子ちゃんキャラで言ってみました。

『下妻物語』に出てくる深田恭子のようにピンクのフリフリの服を着てみたい。歌手の浜崎あゆみのように、フランス人形のような格好をして、スカーレット・オハラが被ったような帽子をかぶり、その帽子から伸びた飾りのリボンを大きな蝶ちょ結びにして首もとを飾ってみたい。なんなら、秋葉原のメイド喫茶や、アンナミラーズの制服でもいい。

でも、今更そんな格好をして歩いたら、行き交う人の目が点になってしまうだろうな。ひきつけを起こす人が続出してしまうだろうな。

仕方ない、ここは“欲望”をグッと抑えて、リカコに髪を“亜麻色の髪の乙女”色に染めてもらい、ピンクのカーディガンでも着て、春の陽気の中をスキップすることでガマンしましょうか。

社内のバーコードおじさんが「毛のあるうちにオールバックを1度やっておけば良かったよぉ」としみじみと言っていたことがある。やっぱりねぇ。