へんなものが頭の隅っこにへばりついてしまった。とても不気味なもので、こんなものが気になる自分自身の精神状態がおかしくなっているのではないかと、いささか不安でもある。

“へんなもの”それは名前を“はりがねむし”という。たまたま見た深夜のTV番組『ネプ理科』で、お目にかかった。お笑いグループ、ネプチューンが色々な実験をしていく中に、カマキリのお尻を水につけると“はりがねむし”が出てくるというのがあった。3人が、かわるがわる軍手をした手でカマキリをつかみ、そのお尻を水槽につける。結果、大ハズレ。な〜んにも出て来やしない。なぁんだと思ったが、番組のスタッフが収録後に何十匹ものカマキリのお尻を水槽の水につけて、とうとう“はりがねむし”を出すことに成功したらしい。番組のエンドロールの、そのまた後でその模様を放映していたが、その映像が凄かった。薄緑色のカマキリのお尻から、ミミズを黒く細くしたような、ひも状のものがニョロニョロと水の中に伸びて行く。体長5センチも無いカマキリのお尻から出てくる“はりがねむし”の長さは50センチを下らないだろう。いったいどうやってカマキリの体の中に入っていたのか、とても不思議だ。

翌日からは、TVの画面でその不気味さは分かっていながら、ついついインターネットで“はりがねむし”を引っ張り出してしまう。中にはカマキリのお尻から出てくる様を、ご丁寧にも連続写真で載せているHPまである。「ゲッ、何この長さ?!」などと思いながら、ネットの『お気に入り』に追加している私だった。では、そこに載っていた内容を。

『ハリガネムシとは類線形動物門ハリガネムシ綱(線形虫綱)ハリガネムシ目に属する生物の総称。体は左右対称で、非常に細長く、内部には袋状の体腔がある。表面はクチクラで覆われていて体節はない。種類によっては体長数cmから1mに達する。
水中に産卵された卵は孵化し、その幼虫は水生昆虫に寄生する。その宿主である水生昆虫がカマキリなどに食われると、その体内で寄生生活をおくり成虫になる。成虫になると宿主から出て、池や沼、流れの緩やかな川などの水中で自由生活し、交尾・産卵を行なう。ハリガネムシは宿主を水辺へ向かうよう仕向け(このメカニズムは不明だが、体温を上げ、水をかぶりたくするという説も)、身体を破って外へ出る』。

不気味ですねぇ。怖いですねぇ。寄生されたカマキリは、さぞ苦しく無念であったことだろう。それにしても、カマキリに寄生するまでも計画しつくされ、その宿主を自分が行きたい水のある場所に誘導するとは、どこからどこまでもオゾマシイ奴じゃ。なんか、人間の世界にも居そうな気がするぞ。

社のトイメンに座るP氏は、ご自分が巳年生まれのせいか、蛇の類が気になるらしい。やたらに数字に強く、やたらにお偉いさんから資料作りを頼まれるP氏は、眉間に皺を寄せながら、いっつもPCのキーボードを雷のようにバンバン叩いて数字を打ち込んでいる。ところが、カラープリンターから出てくる資料には、数字の羅列の他にニシキヘビ、コブラ、マムシなどがプリントアウトされたものが混じっていることがある。

「そりゃぁ忙しいですけど、息抜きに蛇を見てたりもするんですよ」とP氏。ちょっと蛇関連の話題を向けると「日本のマムシの生息地最南端は屋久島」だとか、「日本で最大級の蛇はアオダイショウで2m以上にもなるものもいる」とか、「日本ヤマカガシは毒が無いと思われていたが、噛まれて亡くなった人が出てから猛毒をもつと恐れられだした」などと、目を輝かせながら薀蓄を垂れる。

P氏のご自宅は千葉の新興住宅地で、近くにはご自身で「蛇山」と名づけた山がある。休日はサンダルをつっかけて、その山へフラッと昇るのが気分転換になるんだそうだ。ところがある日曜日、蛇山に登っている途中で実際に蛇に遭遇。「もぉ一目散で逃げました。でも、蛇さんも驚いたでしょうね、のんびりと日向ぼっこでもしていたんじゃないかなぁ」。そんなノンビリ・モードの蛇なら、さぞ嬉々として観察したのかと思ったのに「私、蛇大嫌いですから」って。分からん、意味分からん。それでも興味のある対象には“さん付け”をする律儀なP氏だった。

不気味なものに興味を持つのは、大人も子供も同じらしい。生後11ヶ月の頃から、我が家でめんどうをみていたモトちゃんは、父・母・私には直ぐになついてくれたのだが、豚弟にはなかなかなつかず、姿を見ては泣く日が続いた。これが、母や私が抱っこしたり、おんぶをしてやっている時に、わざわざ豚弟の姿を探し、見付けては大泣きをするのだ。おんぶの時など、のけぞって首をまわし荒川静香のイナバウワーもどきの体勢で豚弟を探す。そして、自分から見つけ出した挙句に大泣きなのだから、「探さなきゃいいのにねぇ」と、皆で話したものだ。

どうやら怖いもの見たさという精神構造は、生後11ヶ月にして早くも目覚めているらしい。確かに豚弟は、太い、短い、白いという体型で、“はりがねむし”とは対極の不気味さを持っている。私が画面に映し出されたハリガネムシに、ある意味目を奪われたのと同じように、11ヶ月にしてモトちゃんも豚弟の得体の知れない不気味さに惑わされてしまったのだろうか。

そういう点では義妹も同じだ。恋愛ならいざ知らず、チビ・デブ・醜男の豚弟と見合い結婚をしたのだから。初めて義妹を見た時には驚いた。スラッと伸びた手足、抜けるように白い肌。なんでこの娘があんな豚弟と?!

もしかしたら豚弟は“はりがねむし”が、己の寄生した虫を水辺に導くような催眠の技を隠し持っているのかも知れない。ここは、“はりがねむし”と豚弟をよくよく観察してその技を盗み出し、寄生できる私の“殿様バッタ”でも探すとしようかしらン。